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経理部門向けコラム~決算の早期化~

決算の早期化

「決算早期化」というキーワードを10年以上も聞いているような気がする。たかだ決算、されど決算というか、早くやれば済むものなのに、なかなかこの経営課題は解決されない。企業にとって解決すべき課題が長く解決されない状態が続くのはよくない。

早く済ませれば良いだけなのに、なぜ課題解決が長引くのだろうか。

早く済まそうと思ってもできないもの

「早く済ませればいいのに、それができないもの」そういうのが世の中にないかと探してみると、所得税の確定申告の提出がある。提出期限の3日前、当日に税務署に行くとわかるものだが、列をなして申告書を提出する人達がいる。

還付申告であれば早く申告すれば早くお金が返ってくるし、テーマパークの乗り物に乗るのに行列で待つのならともかく、税金の申告をするのに待つのはバカバカしい。早くすればいいのに・・と思うし、国税庁も早く済ませるための施策や呼びかけをしているが、相変わらずギリギリに提出する人が多い。

 確定申告の例もあるが、子供の夏休みの宿題にも同じようなことがいえる。早く済ませればいいのに、夏休みの宿題を早く済ませる優等生を見つけるのは至難の技だ。

 なぜ、ぎりぎりまで宿題をやらないのか-。このことは日本中の父兄が知りたがり、そして、困っていることであろう。

 「早く済まされば得」ということでもあれば、急かすこともしやすいが、早くしても得となることも見当たらず、早くしろと言い続けると、うるさいと嫌がられる。決算早期化も同じようなことが言えるような気がする。

決算を行うための前提となること

ただし、企業の中には早くしろと急かさなくても、従業員が早く行う処理がある。たとえば経費精算処理である。社員が立て替えた出張経費などは、精算を行わないと立替金が返ってこないため、いつまでに精算処理を行うという督促処理をしなくても従業員は前向きに精算処理を行うものである。それでも、決算時には正確な決算を行うために「?日までに経費精算を終えてください!」という趣旨の督促メールが届くものである。

締め日を設けて入力を必要とするものは、経費精算だけではなく、他にもあるものである。さらに、販売システムや人事システムが会計システムと異なる場合には、これらのシステムからのデータ転送も決算の準備として必要な作業となる。

決算早期化の阻害要因の多くは、決算処理そのものでなく、決算に必要なデータがタイムリーに入力されていないことにあると認識すべきである。そして、その締日を要する処理について次のように見直してみるのはどうだろうか

①締日を設けなくてもリアルタイムに取引発生時に処理を完了させるようなことに変更できないか

②締日を月末月初から月中の一定日に変更できないか

③システムが連動していない場合には、統合システムを再構築できないのか

決算値が固まった後の作業

決算に必要なデータが入力され、決算処理が終わると決算値が固まることになる。決算値が固まると決算が終わるかと言えばそうではなく、報告資料を作成するという作業が残っている。この報告資料を作成することに意外と時間がかかったりするものである。例えば、A3用紙に1枚でまとめるということや、増減分析の説明などがある。

また、役職の高い方は、デジタルデバイド(コンピュータやインターネットを使いこなせない状況)があるので、報告資料を紙でまとめないといけないという状況もある。

ところが、最近の実情ではデジタルデバイドはほぼなくなったといってよく、高役職の方でもコンピュータやインターネットを使いこなせるようになってきている。

こうしてみると、決算値が固まった後、報告資料を作成することに時間がかかっているのであれば、その時間をロスしていることを明記すべきである。上司に報告するための資料作りに時間がかかり、上司の判断が遅れてしまうより、報告の体裁など気にせず、一刻も早く上司は実情を知るべきであると思うし、それが経営管理というものだ。

そこで、デジタルデバイドもなくなってきている現代であるから、決算資料を部下が作って上司に報告するということは排除し、上司自ら決算値をシステムに見にいくような環境を構築することを推奨する。昨今、データウェアハウスやビジネスインテリジェンスと呼ばれる、レポーティングシステムが発達している。

決算値を固めるためのお化粧

ある経理部長が、決算調整をしなければ決算はすでに完了している、とボヤいていたことがあった。その決算調整は「粉飾?」と聞こえるかもしれないが、節税と脱税の明確な違いを言い切れないように不正と言われない許容範囲の中での決算調整はあり得るものだ。

その多くは、棚卸資産や営業債権の評価、引当金の計算、原価差異の処理などで、そこには経理担当者の判断が介在する。

しかし、その判断というものは本当に必要なのだろうか。AI(人工知能)が発達してくれば、そうした判断の仕事もコンピュータが行えるようになる。また、人間が判断しないと仕事が終わらない属人化の作業領域を持つことは企業にとってもよろしくない状況ではないか。

近い将来、AIが発達して判断を要する経理処理もコンピュータで賄える時代がくるものと予想する。

その頃には、「決算早期化」という課題の言葉自体が消滅し、取引が発生すると、その時点で処理が完了し、「決算書出力」というボタンを押すと、その時点での決算書が出力できるようになっているであろう。

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